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梼原

水曜日の色


梼原


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梼原に行く前に、知人がたまたま読んでいた「忘れられた日本人」に、梼原の話が出てくると教えてくれた。
民俗学の宮本常一のその本を夫の本棚に見つけので、旅の荷物に入れた。

友達が住んでいる高知の梼原という所へ、鹿児島の指宿に住む私が行くには、電車と新幹線でひたすら陸路を行く、或いは飛行機を使う、或いは九州から四国へフェリーで渡るなど考えられたが、確実に簡単に行けそうな電車と新幹線で行くことにした。
途中、九州新幹線はよく乗っているし、トンネルも多いので少し退屈だ。それで九州新幹線で、「忘れられた日本人」の土佐梼原でばくろうをしていた老人の話を読んだ。ばくろうというのは牛や馬の仲買人のことで、その老人は牛を扱っていた。話の中心はばくろうのことよりも、おおらかな時代の男と女の話であったりするのだが。

梼原は遠い。指宿を朝出ても、暗くなってからしか梼原に着かない。それで、新幹線で着く岡山に前泊することにしていた。夜、岡山の宿で、友達よりiPhoneにメッセージが届いた。
岡山から高知を経て須崎という駅まで行く。そこからバスでやっと梼原に辿り着く。
友達のメッセージで、バスは旧道と新道を通るのがあるということに気が付いた。旧道は一車線しか無い狭い道を行くのだとか。私が乗ろうと予定していたバスは旧道を通る方で、その到着予定の時刻の返事をした。

岡山から須崎までは一本で行ける南風号の列車に乗った。瀬戸大橋を渡り、四国に入る。3時間半かかって須崎に着き、梼原行きのバスに乗った。
車窓より、なだらかな川では、川に入り釣りをしている人が見える。きっと鮎釣りだろう。
途中から、集落を抜けて本当に狭い道をバスは通り、だんだん高度も上がって行く。
こんな所までと思うような所にも茶畑がある。
かつてのばくろうは牛とともにどのくらいの時間をかけて、梼原と麓の里を行き来したのだろうか。
1時間ちょっとバスに揺られ、とうとう梼原に着いた。バス停に友達が待っていてくれた。真っ黒に日焼けしていた。

「忘れられた日本人」には、興味深い話が幾つもあって、その中に、世間師の話がある。
村人たちの間で、旅をして周った経験のある者を世間師と呼んでいたそうなのだが、また、女たちも世間を知るのに旅に出たという話も出て来る。

今では、テレビもあるし、ネットもあるし、本を読んでもいいし、世の中のことを知る手段はたくさんある訳だが、それでも旅に出るのはいい。
まあ、私の旅なんて、飛行機や新幹線でビュッと行けるし、今回の梼原は友達に車で案内してもらったので、本来の旅とは違うだろうが、梼原に行けて本当に良かった。
友達には心から感謝している。

梼原はとても良かったし、友達に十数年振りに会えたことはもちろん嬉しかった。
梼原の町で元気に過ごしている様子を見聞きして、私も元気をもらった。
いつか、屋久島のうちに来てくれたように、指宿のうちにも遊びに来てください。






by kiyoko_ki | 2017-09-20 16:10 | 水曜日の色