ヒメシャラ

水曜日の色

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ヒメシャラ


こちらに越して来て、新居であるうちから下る狭い坂道の途中にヒメシャラの木がある。この辺りの標高はたかだか200メートル位なので、その木肌はヒメシャラなのだが、果たして本当にヒメシャラなのだろうかとも思ったりしたが間違いは無さそうで、白っぽい薄茶や灰色がかった緑や赤っぽい煉瓦色などの混じる樹皮の覆う木肌を触ってみると、つるんとした冷たいあの感触がするのだった。


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夫と私は結婚して東京に3年半程暮らして、主に休日には高尾山やその周辺を歩いたりしていたが、時にはその頃は泊りがけで出かけて散策を楽しむこともあって、二人で箱根に行ったことがあった。
箱根の駒ケ岳に登った時だが、私は軽い高山病なのか頭痛に悩まされてしまい、点在するヒメシャラに会うたびにに抱きついて、痛い頭をその木肌で冷やしたりして歩いたのだった。

東京より移住した、屋久島の標高の高い山にもヒメシャラはあって、ヒメシャラに会えばやはり、その木肌を触って冷たい感触を楽しんでいた。

私のヒメシャラの記憶は恐らくそのふたつなのであったが、ヒメシャラは私にとって忘れ難い木のひとつで、引越して来たらヒメシャラがあったというのはかなり喜ばしい。

うちの周りには造園業を営んでいる場所が多くあり、そんな斜面が続く尾根道といった感じの農道脇にもヒメシャラの木はあって、昨日は通りがかったら、低い枝に咲いている花を見ることが出来た。ヒメシャラはツバキ科で、花は正に小ぶりな白い椿だ。


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坂道を下ったヒメシャラの辺りに居ると、時々この坂道を歩いていると言う方と出会って立ち話をした。尋ねられたので引越して来たことを伝えると、鹿児島ナンバーの車のおうちですねとすぐにわかったようだ。伊豆でも天城にはヒメシャラが多いそうで、天城のヒメシャラ林の話を聞いた。 

ヒメシャラを見上げると、花の名残があるようだが高くてよくわからない。が、もう少し下った所の地面に、昨日見たのと同じ、小ぶりな白い椿の形の花が落ちていた。それは椿に特有のぽとりと花ごとそっくり落ちた様子で、徐々に土と馴染もうとしているようだった。 

ところで、うちからは富士山が見える。その東には丹沢の大山も見えて、その真ん中辺りにやはり高い山が見える。山岳地図で確認してみて、その真ん中は箱根の山ではないだろうかと見当を付けた。ヒメシャラと出会った駒ケ岳が見えるというのなら何とも嬉しい。

屋久島、指宿と鹿児島に15年暮らして、その前の二人で暮らし始めた東京近くへ舞い戻って来て、何だか原点に戻ったというような気持ちがする。目にする植物も懐かしい物でいっぱいだ。

毎日、うちから坂道を下ってヒメシャラに会いに行きたい。ヒメシャラは落葉樹だが、冬のヒメシャラを私は知らない。箱根の駒ケ岳に行ったのはヒメシャラの葉の青々と茂った季節だったし、屋久島のヒメシャラのある場所は、冬積雪のある所だったからそんな時期に行ったことが無かった。

一年を通して会うヒメシャラは一体どんな様子だろうか。
そして坂道にヒメシャラのあるこの小高い山の季節の移ろいはどんなものだろうか。







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by kiyoko_ki | 2018-05-30 15:19 | 水曜日の色 | Comments(0)

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